椎間板ヘルニアとは(概説)
椎間板から髄核が押し出されて神経根を圧迫する病気
椎間板ヘルニア。腰椎の下部におこりやすく、腰痛の原因に・・
背骨は、首の骨(頸椎)から尾骨まで、積み重なった32~35個の脊椎骨(せきついこつ)と、それぞれの骨の間にある椎間板(ついかんばん)というクッションからできています。
椎間板は、中央にゼラチンのような、やわらかい弾力性のある髄核(ずいかく)という部分があり、その周囲には繊維輪(せんいりん)という比較的かたい軟骨が幾重にも囲んでいて、脊椎に上下から加わる力を全体に均一に分散させ、衝撃をやわらげています。
成人になると椎間板の変性が始まり、繊維輪の弾力性がなくなり、ところどころに亀裂が生じ始めます。
このとき、椎間板に強い力が加わると、椎間板内部の圧が上昇して繊維輪の亀裂から髄核が押し出され、神経根を圧迫して痛みやしびれ、麻痺などの症状を引き起こします。この状態を椎間板ヘルニアといいます。
椎間板ヘルニアは、髄核にまだ弾力がある20~30歳代の男性に多い病気で、腰椎の下部にもっともおこりやすく、この年代の男性にみられる腰痛の多くは、この病気が原因になっています。
(画像:岩井整形外科内科病院)
椎間板ヘルニアのおこりやすい部位
圧倒的に多い腰椎椎間板ヘルニア
椎間板ヘルニアは、まれに頸椎(くびの骨)に起きることもありますが、圧倒的に多いのが腰椎(ようつい、腰骨)において発生します。
腰は、体重を支えるためにもっとも大きな負担を強いられており、からだを曲げ伸ばしするときや、物を持つときにも、いちばん負担が加わるところです。
急激に腰をひねったり、中腰で重いものを持ち上げたりしたときに、椎間板に強い力が加わり、椎間板ヘルニアを発症するケースが多くみられます。
上述したように、椎間板ヘルニアは比較的若い人に発生しやすい病気です。
成人になると骨や繊維輪などはいち早く老化が始まりますが、クッションを担う髄核にはまだ弾力性が残っています。そんな時に腰部に強い衝撃を与えてしまうと、椎間板ヘルニアを発症して腰痛に悩まされることになります。
腰椎椎間板ヘルニアの症状
激しい痛みが慢性化します
重いものを持ったり、腰をひねったりしたときに突然激しい痛みがおこる、いわゆる「ぎっくり腰」のかたちで発症することがあります。発症直後は、激しい痛みで動けませんが、たいてい2~3週間で軽くなり、その後、慢性化します。
一方で、最初から慢性的な症状があらわれる椎間板ヘルニアもあります。
いつとはなしに、鈍い腰痛や手足のしびれ感で始まり、しばらくすると症状は消えるのですが、また再発するといったことをくり返します。
急性であれ慢性であれ、腰椎に生じた椎間板ヘルニアでは、多くは腰痛のほかに、左右どちらかの臀部(おしり)から、太ももの後ろ側、膝から足首さらにつま先にかけて激しい痛みが走る坐骨神経痛(ざこつしんけいつう)の症状をともないます。
ヘルニアによる坐骨神経痛の特徴は、せき、くしゃみ、あるいは排便時にいきんだりするだけでも痛みが強くなることで、これをデンジェラ症候ということもあります。
顔を洗うときに前かがみになったり、中腰になるなど、腰を丸める姿勢でも痛みが増すことがあります。さらに、痛みのほかに、しびれや脱力感、知覚障害がみられ、ものにつまずきやすくなったりします。
椎間板ヘルニアの治療
運動療法が基本~筋肉を鍛えて腰椎の負担を軽減します
椎間板ヘルニアの痛みは、脱出した髄核によって神経根が圧迫されることと、神経根やその周囲に炎症がおこることが原因ですから、痛みの激しい急性期には、消炎鎮痛剤を内服して、安静にしていれば、数日から一週間くらいで楽になります。
しかし、炎症が一時的に消えても、ヘルニアがひっこんでしまうわけではないので、痛みが軽くなって慢性化したら、牽引療法や温熱療法、運動療法が行なわれます。
牽引療法は、脊柱をひっぱって伸ばし、脱出した髄核が自然にひっこむのを期待する療法です。
通院で治療を受けても、症状が頑固に続く場合や、痛みがひどくて歩くこともできないようなときは、入院が必要になります。
病院では、ベッド上で牽引療法を長時間続けるとともに、局所麻酔剤やステロイド剤を痛む部位に注入する硬膜外ブロックな
どが行なわれます。
それでもなお効果がない場合は、手術の対象になります。
手術の方法には、背中を切開して脱出した髄核を切除する後方手術と、腹側からヘルニアを椎間板ごと摘出する前方手術とがあります。
どちらの方法を選ぶかは、ヘルニアの大きさ、椎間板の変性の程度、ヘルニアをおこした部分の近くの脊椎の状態などによって決められます。
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