ビタミンは微量な栄養素ですが、不足したり過剰になったりすると代謝異常を引き起こし、さまざまな病気を発症します。ビタミンの働きと、ビタミン欠乏症/ビタミン過剰症の症状についてまとめました。

 

ビタミン欠乏症 ビタミン過剰症 代謝異常

  

ビタミンの関係する代謝異常
(ビタミン欠乏症とビタミン過剰症)

ビタミンの働きと代謝異常

ビタミンD欠乏症で生じるくる病。骨格の変形や骨の成長障害を伴います。
脚の骨が変形する「くる病」
幼児期のビタミンD欠乏症で発症します。

ビタミンとは、三大栄養素(糖質・脂質・タンパク質)が体内でうまく利用されるように代謝の仲立ちをしたり、からだのいろいろな働きが順調に進むように調節したりする微量な栄養素です。

ビタミン自体は、からだの血となり肉となる栄養素ではありませんが、ビタミンの働きがあってこそ、からだの発育が促され、健康が保たれるわけです。したがって、ビタミンの摂取が不足するとさまざまな代謝の異常がおこり、それに起因した数々の病気が発生します(ビタミン欠乏症)。

逆に、ビタミンの種類によっては、過剰摂取すると問題になることがあります(ビタミン過剰症)。
ここでは、ビタミンに関係した代謝異常と、それによって引き起こされるからだの異常・障害についてまとめました。

(画像:毎日新聞)

ビタミンの種類と性質

水溶性ビタミンと脂溶性ビタミン

ビタミンは現在、13種類が知られています。これらのビタミンは、大別すると水に溶ける性質がある水溶性ビタミンと、油に溶ける性質がある脂溶性ビタミンに区分されます。

水溶性ビタミン
ビタミンB群(B1、B2など8種)とビタミンCの合計9種。
水溶性ビタミンは水に溶けるため、過剰摂取しても尿に溶けて排泄されるため毒性はありません。したがってビタミンが不足する、ビタミン欠乏症の場合のみ障害を誘発します。

脂溶性ビタミン
ビタミンA、D、E、Kの4種類。
脂溶性ビタミンは、過剰摂取した場合は脂肪に溶けて体内に蓄積します。そのためビタミン欠乏症はもちろんですが、過剰摂取した場合にも健康障害を引き起こします(ビタミン過剰症)。

水溶性ビタミンの関係する代謝異常

ビタミンB1と代謝異常

ビタミンB1は、糖などを分解してエネルギーを作るときに必要な物質です。これが不足すると酵素のはたらきが悪くなり、糖質の代謝異常がおこります。

ビタミンB1欠乏症でおきる代表的な病気は、脚気(かっけ)です。神経機能の調節や消化機能が低下して、食欲不振や倦怠感、手足のしびれ、アキレス腱と膝蓋の腱反射の消失などが現れます。

ビタミンB1を添加した強化米や、ビタミンB1を多く含んだ豚肉・胚芽米・きなこ・落花生・ゴマなどを多く摂取することが予防につながります。

ビタミンB2と代謝異常

ビタミンB2は、脂質や糖の代謝に関わるビタミンです。このビタミンが不足すると種々の代謝異常がおこり、発育期の子供は成長の遅れや消化不良を起こします。また、びまん性角膜炎や口腔の炎症、脂漏性皮膚炎などを併発します(ビタミンB2欠乏症)。

ビタミンB2欠乏の原因が、食事による単なる摂取不足にあるのか、それとも小腸でビタミンB2を吸収し利用する能力に問題があるのかを診断して治療に当たります。

ビタミンB6と代謝異常

タンパク質はアミノ酸が多数結合したものですが、ビタミンB6は、このアミノ酸の結合や分解に係わる酵素のはたらきを助けます。また、副腎髄質ホルモンや神経伝達物質の合成にも関わっています。

ビタミンB6が欠乏すると、湿疹や脂漏性皮膚炎、口唇炎、貧血、神経炎などがおこります。また、免疫力が低下したり、歯や歯茎の異常がおこったりします(ビタミンB6欠乏症)。

ビタミンCと代謝異常

ビタミンCは還元力の強いビタミンで、生体が酸化されるのを防いでくれます。また、毛細血管の機能を正常に保つうえで重要な役割を果たしています。ビタミンCが欠乏すると、血管壁がもろくなり、皮下出血をおこしやすくなります(ビタミンC欠乏症)。

ビタミンC欠乏症の代表的な症状に、壊血病があります。皮膚の蒼白や点状出血がおこり、やがて歯茎や皮下の出血、粘膜や筋肉・内臓の毛細血管の出血へと広がっていきます。この壊血病は、ビタミンCの投入治療を続けることで完治できます。

脂溶性ビタミンの関係する代謝異常

ビタミンAと代謝異常

ビタミンAは、脂肪に溶ける脂溶性ビタミンの一種で、からだの発育、生殖機能の維持、目の暗順応(暗くなっても見える目の順応性)、感染に対する抵抗力の維持などの働きがあります。

ビタミンA欠乏症の代表的なものに夜盲症(鳥目)があり、暗いところでものが見えにくくなります。また、生殖作用の維持障害がおこり、女性では卵巣の成長や卵子の形成障害がおこります。男性では精子の形成障害がみられます。
皮膚の角質化が生じたり、細菌やウイルスの感染により気管支炎や膀胱炎などにかかりやすくなります。

逆にビタミンAを摂りすぎると中毒症状をおこします。吐き気や頭痛、意識障害(脳圧亢進症状)、視力障害、手足のまひなどが生じます(ビタミンA過剰症)。

ビタミンDと代謝異常

ビタミンDは、カルシウムとリンの小腸からの吸収をうながし、正常な骨の発育や維持に必要なものです。骨から血液中へのカルシウムの移動を円滑に行って、血液中のカルシウムの量を一定に保つ働きもしています。がんを抑える作用や骨粗鬆症を抑える作用があることも分かっています。

ビタミンDが不足すると、歯や骨の発育不良、骨の変形などがおこります。子供ではくる病、おとなでは骨軟化症がおこります。くる病というのは、足などの骨が曲がって変形し、進行すると、歩行困難になることもある病気です(ビタミンD欠乏症)。

一方、ビタミンDを過剰摂取すると、成長期の子供では発育が止まったり、重症になると昏睡・けいれんをおこして死亡することもあります(ビタミンD過剰症)。

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