風邪とインフルエンザ
病原体となるウイルスの違い
インフルエンザウイルスの電子顕微鏡写真
風邪(かぜ)は、人類が一番よくかかる病気で、一年間に子供では7回、おとなでは4回ほどかかるといわれています。
この風邪ですが、医学的な正式名称は「かぜ症候群」とよばれ、いろいろな病原体による感染症を併せてこのように呼ばれています。
かぜ症候群の大部分はウイルスの感染でおこりますが、全体の10%ほどはレンサ球菌やマイコプラズマなどの細菌の感染でおこります。
ウイルス感染でおきるかぜ症候群のうち、インフルエンザウイルスが感染して発症したものをインフルエンザ、それ以外のウイルス(および細菌)の感染で発症したものを普通感冒と呼び分けています。
単に「風邪」といった場合は、たいていは普通感冒のことを指しています。
したがって、いわゆる風邪とインフルエンザとは、病原体のウイルスが違うだけです。ウイルスが違うだけなのですが、その症状はだいぶん違いがみられます。
風邪とインフルエンザが具体的にどう違うのか。その違いについて観てみましょう。
(画像:静岡県立大学薬学部)
インフルエンザウイルス
冬に猛威。流行を繰り返すインフルエンザ
インフルエンザは、インフルエンザウイルスに感染することによって起こる病気です。普通の風邪よりも急激に発症し、症状が重いのが特徴です。
インフルエンザに感染すると、1~5日の潜伏期間の後、38℃以上の高熱や筋肉痛、倦怠感などの全身症状が突然あらわれます。やや遅れて、咳(せき)やのどの痛み、鼻水などの呼吸器症状があらわれ、悪心(吐き気)などの消化器症状や腰痛などを訴えることもあります。
健康な人であれば、7日前後で症状が落ち着き治癒に向かいます。免疫力の低い老人や幼児では、気管支炎や肺炎を併発することもあり、重篤な場合は脳炎や心不全などの合併症を併発することもあります。
インフルエンザは、日本では例年11~12月頃に流行が始まり、1~3月にピークを迎えます。
インフルエンザウイルスには強力な感染力があり、いったん流行すると、年齢や性別を問わず、多くの人に短期間で感染が広がります。
インフルエンザウイルスの型
ヒトに感染するインフルエンザウイルスには、A型・B型・C型の3つの型があり、感染の流行が問題となるのはA型とB型です。
A型インフルエンザウイルスは感染力が強く、症状が重篤になる傾向があります。過去に世界的大流行(パンデミック)をおこしたスペインかぜ、イタリアかぜ、アジアかぜ、香港かぜ、ソ連かぜは、すべてA型インフルエンザウイルスによるものです。いずれも多数の死者が出ています。
B型インフルエンザウイルスは、A型よりも症状が比較的軽く、限られた地域で流行するケースが見られます。またC型インフルエンザウイルスは鼻かぜ程度の軽い症状ですむことが多いウイルスです。
インフルエンザウイルスは、本来はカモなどの水鳥を自然宿主として、その腸内に感染する弱毒性のウイルスであったものが、突然変異によってヒトの呼吸器への感染性を獲得したと考えられています。
風の病原体
一年中みられる風邪の発症
風邪は、アデノウイルスやライノウイルス、コロナウイルスなど7種類のウイルスと、レンサ球菌やマイコプラズマなどの細菌の感染によって発症する病気です。
インフルエンザと違って、風邪は一般に発熱も軽度であり、発症後の経過もゆるやかです。のどの痛みや咳、鼻水・鼻づまりなどの症状が主にみられます。
■ライノウイルス:
風邪(普通感冒)の代表的な原因ウイルスで、風邪の約半数はこのウイルスを原因として起こります。季節にあまり関係なくおこり、くしゃみ、鼻水、鼻づまりなどが主症状です。
■コロナウイルス:
冬に感染しやすく、おもに鼻かぜの症状がみられます。風邪の15~20%がこのウイルスを原因として起こります。
■アデノウイルス:
春から夏にかけて流行する風邪です。夏にプールを介して流行することがあるため「プール熱」として知られています。プールに入らなくても飛沫感染します。
■RSウイルス:
11月から1月にかけて冬期の流行が多い。成人では普通のかぜの原因ですが、小児では気管支炎や肺炎を起こすことがあります。新生児や乳児では重症になりやすく注意が必要です。
■レンサ球菌:
5歳~15歳の小児に多く発症します。38度~39度の高熱がでて、喉の痛みや嘔吐をともないます。年間2回、冬と夏とに流行のピークがみられます。
■マイコプラズマ:
4年に一度、オリンピックが開かれる年に流行する傾向にあったことから、オリンピック熱とも呼ばれます。肺炎を起こしやすく、最近では、おとなが感染して重症化するケースが急増しています。
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