代謝とは何か/代謝異常とは
代謝異常はさまざまな病気を発症します。
私たちは、毎日の食事で栄養素を摂り入れ、それを体内で燃やして、活動するためのエネルギーにしています。このように、栄養素をエネルギーに変え、生体の活動を維持していくシステムを「代謝」といいます。
体温を調節したり、呼吸をしたり、心臓を動かしたり、食べ物を消化・吸収したり、古い細胞を新しい細胞に生まれ変わらせたりするのも、みんな代謝の働きによるものです。代謝は、私たちの生命活動そのものといえます。
この代謝の機能に異常をきたし、正常な代謝ができなくなった状態が「代謝異常」とよばれます。
糖代謝が異常になると、血液中の血糖値が上昇し、糖尿病を引き起こします。コレステロールや中性脂肪などの脂質代謝が異常になると、肥満症や動脈硬化を起こし、脳梗塞や心筋梗塞などのリスクを増大させます。
他にも、ビタミンの関係する代謝異常や、ナトリウムやカルシウムなど塩類の代謝異常もあります。
代謝異常になるとどんな病気になるのか? 具体的に観てみましょう。
(画像:Men's HOLOS)
糖代謝の異常/代謝異常による病気1
糖尿病・低血糖症
私たちの生命を維持するエネルギー源として重要な役割を担っているのが、糖質などからつくられるブドウ糖(グルコース)です。ブドウ糖が細胞内に取り込まれ、代謝されるためには、膵臓から分泌されるインスリンというホルモンが必要です。
ところが、なんらかの原因でインスリンの分泌量が減少したり、作用が低下すると、細胞にブドウ糖がスムーズに取り込まれなくなり、血液中のブドウ糖の濃度(血糖値)が上がる高血糖の状態になります。このような糖代謝異常が原因で起こる病気が糖尿病です。
糖尿病になると網膜症や腎症、神経障害などの合併症を引き起こし、視力を失ったり、糖尿病性昏睡に陥って死亡することもあります。
逆に、血糖値が低すぎる場合も問題です。低血糖症で脳細胞に十分な栄養が供給できなくなると、さまざまな神経症状や精神症状、脳機能障害が出てきます。
脂質代謝の異常/代謝異常による病気2
脂質異常症(高脂血症)・肥満症・やせ
血液中にふくまれるコレステロールや中性脂肪などの脂質が、一定の基準よりも多い状態を脂質異常症(高脂血症)いいます。血液がドロドロになっている状態です。
血液中に余分な脂質が多くなると動脈硬化を起こしやすくなり、心筋梗塞や脳梗塞などのリスクが高くなります。それが脂質異常症という病気です。
脂質異常症は肥満症とも密接な関係にあります。過食と運動不足が重なると、余分な脂質が皮下脂肪や内臓脂肪として貯蔵され、あの見事なデブデブの体型ができあがります。
一方、肥満の反対を「やせ」(羸痩:るいそう)といいます。やせは、単に脂肪が少ないだけでなく、筋肉などの組織も減少しているのが特徴です、栄養失調のほかにも、がんや内分泌系(ホルモン)の病気、精神や神経に原因がある内因性のものなど、いろいろな病気が原因となっている場合があります。
ビタミン代謝の異常/代謝異常による病気3
ビタミン欠乏症・ビタミン過剰症
ビタミンは、三大栄養素(炭水化物・脂質・タンパク質)が体内でうまく利用されるように、代謝の仲立ち(補酵素の役割)をしたり、からだの調子を整える働きがあります。ビタミンが不足すると代謝異常がおこり、成長に障害が出たり、さまざまな病気を発症します(ビタミン欠乏症)。
なお、ビタミンには13種類が知られています。このうち、水溶性ビタミン(B類、Cなど9種)は剰摂取しても尿に溶けて排泄されるため毒性はありませんが、脂溶性ビタミン(A、D、E、kの4種)は、体内の脂肪に溶けて蓄積するため、摂取が過剰すぎても障害が出ます(ビタミン過剰症)。
ビタミンの代謝異常で主なものは以下のようです。
ビタミンB1~糖質の代謝異常がおこり「脚気」と呼ばれる多発性神経炎を発症します(ビタミンB1欠乏症)
ビタミンB2~脂質や糖の代謝に関わるビタミンです。不足すると発育期の子供は成長の遅れや消化不良を起こします(ビタミンB2欠乏症)
ビタミンC~酸化作用があって生体が酸化されるのを防いでくれます。不足すると壊血病を引き起こし、貧血、出血、脱力感などの症状がでます(ビタミンC欠乏症)
ビタミンA~からだの発育や目の順応性に関係するビタミンです。不足すると夜盲症や鳥目になってしまいます(ビタミンA欠乏症)。逆に過剰に摂取すると吐き気や頭痛、意識障害(脳圧亢進症状)、視力障害、手足のまひなどが生じます(ビタミンA過剰症)。
ビタミンD~カルシウムとリンの小腸からの吸収を促します。不足すると歯や骨の発育不良、骨の変形、骨軟化症などをおこします(ビタミンD欠乏症)。過剰に摂取すると成長期では発育が止まったり、重症になると昏睡・けいれんをおこして死亡することもあります(ビタミンD過剰症)。
カルシウム代謝の異常/代謝異常による病気4
低カルシウム血症・高カルシウム血症
身体に必要な無機質(ミネラル)は16種類ありますが、その中でも鉄、亜鉛・カリウム・ナトリウム・マグネシウムなどと並んで重要なミネラルに、カルシウムがあります。
血液中のカルシウム(特にイオン化カルシウム)は、神経や神経の興奮に深く係わっています。このカルシウムが不足すると、手指や足にしびれ感やテタニー症状(痛みを伴って筋肉が固くけいれんする症状)が出現します(低カルシウム血症)。
一方、血中カルシウム濃度が高くなると、吐き気・腹痛・食欲低下などの消化器症状や、意識障害などが現れます。また、尿中のカルシウム増加に伴う尿路結石や骨粗鬆症をきたします(高カルシウム血症)。
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